ずっとずっと誰にも言えなかったこと

ぼやき

28年間生きてきて、誰にも言えなかったことがある。
「歯」のこと。

好きな人や友達に嫌われたらどうしよう。
汚いと思われたらどうしよう。

そんな思いから、コンプレックスの歯について誰にも相談できなかった。

小さい頃から虫歯が多かった。
親からの虫歯菌感染に加え、親には歯ブラシ指導をしてもらったことがなかった。
母がする歯磨きが痛くて、歯磨き=痛いもの として認識していた。

小学校や中学校での歯科検診。
虫歯だらけで、先生が声に出して結果を言うから、同じ保健室内にクラスのみんながいるのが嫌だった。

中学校に上がり、歯医者に行く決意をした。
もちろんお金がかかる。
親に言うと「あんたが悪い」の一言。
おまけに歯医者はヤブで上の歯を3本抜かれた。
「インプラントしてやるから明日20万持ってこい」と言われた。
親に伝えると「そんなお金ない」とだけ。

自分で少し、この歯医者はおかしいと感じた。
治療途中のまま、行くのが怖くなってやめた。

大学生になったある日、お肉をかじっただけで、左前歯が折れた。
これはやばいと思って別の歯医者さんへ。
根っこが腐っているから抜かなければいけない。
前歯がなくなったらどうしたらいいの、とおばあちゃんに相談したところ、
おばあちゃんが通っている歯医者さんでインプラントを入れてくれることになった。

骨が薄くなっていたため、右下の顎の骨を削って移植してもらい、無事見た目も噛む機能もどうにかなった。
ゴリゴリと音が鳴るのが、すごく怖かった。

そして検診に通ってなんとか8年やってきた。

もともと頑張りすぎる性格もあり、疲労やストレスで噛みしめがひどく、
神経がなかった左下奥歯が割れた。
ついにまた抜かなければいけない。

もうすでに4本抜歯されているのに、また1本なくなる。
そのショックに二週間寝込んだ。
誰にも会いたくなくて、誰にも理解してもらえないと思って、一人で抱え込んだ。
何か食べたら虫歯になると思って、全然食べられなくなって3キロも痩せた。

でも、
おばあちゃんに言ったら「義歯作ってもらったらなんとでもなる」と励まされ、
ずっと付き合っていた人にも辛くて電話したらすぐに会ってくれた。

耐えきれないこの悩みを初めて打ち明けたが、「うん、うん」と優しく聞いてくれた。
「もし歯がなくなっても、入れ歯になっても、君は君のままだから大丈夫」と言ってくれた。
涙が止まらなかった。

これから治療して、いつまで持つかわからない私の歯。
それはみんな同じで、それが目や耳、腕、内臓かもしれない。
そう考えたら、生きていて、普段通りに生活できて、少し噛みづらいだけのハンデを持っている私は恵まれているのかもしれない。

インプラント治療も楽ではない。
金銭的にも、精神的にも。
でも、技術の発達に感謝して、挑戦しようと思う。
少しでも安くなってくれたら、もっと心を救われる若者が増えると思う。

私じゃないけど、私のように歯で悩む人たちへ。

歯で判断する人はここまでと割り切っていい。
わかってほしいなら、今まで溜め込んでいた心のモヤモヤを説明しよう。
経験していない人にはわからない。わかるはずがない。
でも、あなた自身を理解してくれている人はたくさんいると思う。
私もそうでありたい。

少しでも長く、あとの歯といっしょにすごそう。
なくなったらなくなったでその時考えよう。
今をつまらなくする必要はない。
誰だって老いていくし、でも同時に深みが出てくる。
割り切って他の武器を磨いたり、治療のためにお金を貯めるのも一つ。

大丈夫。

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